中古市場で安く買った着物がお宝かもしれない話。

2020年4月新コロ緊急事態宣言の時、家に篭って不用品を断捨離したのは記憶に新しい。

 

私の母も長年収集した人間国宝の着物作品を大手リサイクル会社に手放しました。

着物のリサイクルでの買取価格は人間国宝の作品であろうが、どんな良い織りの着物であろうがハサミが入ってしまうと二束三文。

買った以上の値段にはなりにくい。

 

 

大手質屋の着物部門の店員さん曰く、コロナになって断捨離する人が増えて、買い取った商品が大量に店にあるけどコロナ前ほど売れない、と話していたのはつい最近の話。

実際店頭では高価なイメージのある沖縄の作家作品にお値下げ赤札シールが何枚も重なっている。

こちらとしてはリサイクルで価値あるものが安く買えてありがたい。

 

そんなある日、

私は着物のお稽古の発表会で振袖が必要になるから舞台映えしそうな振袖をリサイクル品で探していました。

 

ずらずら〜と見ていく中で他とは全く違うデザインの振袖を発見。

リサイクル品では珍しく裄も身丈も大きく、大柄な私によく似合いそう。

 

私が絶大な信頼を寄せている

着物の洗濯をお願いしているクリーニング屋のおっちゃんに、

この振袖どう思う?

あまり見かけない柄で素敵だよね?

 

と写真を見せたら、

「これはいい仕事してる」今はなかなか手の込んだ品物は作らないから良い。とお墨付きを貰ったので買うことにしました。

 

その作品がこちら。

背中にが滝がドバーーー!と。
大胆な松竹梅にカラフルにされたタンチョウ鶴と、桃や栗やザクロ
美的感覚、感性ちょっと変わってるなぁ。好き。と思いました。

 

その振袖は、オレンジ色で京友禅の蒔糊の手法で作られている非常に手の込んだものでした。

 

このデザインした人の他の作品も欲しい!と思ったけれど、着物には落款がありませんでした。

探すことも諦めかけていた時、

クリーニング屋のおっちゃんが教えてくれた蒔糊 着物 京友禅でネットで探していると、似たような着物を着てる人を発見。

 

 

よくよく見ると、、、あら。

 

ダイアナ妃?

 

まさかのおそろい?

 

なんと、私がリサイクルショップで買った振袖と同じデザインの振袖をダイアナ妃が着てるじゃありませんか!

 

写真はダイアナ妃が1986年に日本初来日された際のもの。

 

ダイアナ妃に献上された振袖で、重要無形文化財保持者、羽田登喜男(はたときお) 先生の作品でした。

 

初来日の英国ダイアナ妃へ京都府、京都市が二条城で献上するために手描友禅本振袖「瑞祥鶴浴文様(ずいしょうかくよくもんよう)」を製作されたとのこと。

 

そうなると、気になるのは私の手元の振り袖です。

 

先生の作品なのかしら?

 

石川県立美術館で過去に開催された展覧会で似た作品を展示していました。

 

学芸員の方にお話を伺うと、個人の所有の方からお借りしたとのことで、

こちらもやはり落款は無かったとの事でした。

 

はたして市場に出回る物なのでしょうか?

 

学芸員さんによると作家の手控えで

何枚か作ってる場合があるとのこと。

 

失礼を承知で現在活動されている羽田工房さんに電話で問い合わせてみることにしました。

 

ドキドキ。

 

電話口に出てくださった高齢と思わしき男性によくよくお話を伺うと、

この作品は行き先が管理されていて、どこの誰に作品が渡っているか控えてあり、一般には出回らない、とのことでした。

 

なーるほど。

 

1980年代当時、羽田登喜男先生のおしどりの作品が大変人気で、よく似た贋作おしどりが沢山出回っていました。

偽物もありえます。

ただ、意匠登録されている作品の偽物の製作は違法です。

 

私の所有した振り袖も手の込んだ写しでしょうか。

 

写真を送ってくださいとおっしゃってくださったので、

機会があったら真贋鑑定していただきたいと思いました。

 

真相は謎のままです。

 

団塊の世代が2023年に75〜77歳になり高齢となる今、

断捨離や終活で着物を手放す方もより増えるのではないかと思いました。

 

あの時の逸品やお宝が安く私のところに来てくれるかも。

と、これからもリサイクル着物から目が離せません。

 

私の買った瑞祥鶴浴文様の振袖が羽田工房さんで作られた本物だとわかった際にはまたご紹介させて頂きますね。

 

おしまい。

 

2023年3月吉日

スタイリスト瀬戸芙美香